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焦点:「トランプ2.0」に備えよ、同盟各国が陰に陽に働きかけ - ロイター (Reuters Japan)

[ベルリン/メキシコ市/ワシントン 24日 ロイター] - トランプ前米大統領が11月の選挙で政権に返り咲く事態に備え、同盟諸国は自国の利益を守り、あるいは推進するために様々な手を打ち始めている。

貿易戦争や安全保障同盟の見直し、移民取り締まり、気候変動協定からの離脱など、前政権の「米国第一主義」によって冷や水を浴びた前回の二の舞を避けるためだ。

ロイターは5大陸の外交官や政府高官に「トランプ2.0(第2次トランプ政権)」への備えについて話を聞いた。

バイデン大統領を怒らせるリスクを冒し、トランプ氏と直接接触した首脳もいる。消息筋によると、サウジアラビアのムハンマド皇太子は最近、トランプ氏と電話で会談。ハンガリーのオルバン首相とポーランドのドゥダ大統領は、過去数週間中にトランプ氏と面会した。

キャメロン英外相も今月、フロリダ州のトランプ氏の別荘で同氏と会談。外相はその後ワシントンで記者団に対し、会談は私的な夕食会だったがウクライナやパレスチナ自治区ガザ、北大西洋条約機構(NATO)の将来などを議論したと語った。

トランプ氏陣営によると、同氏は欧州の各首脳とは安全保障問題について話し合った。ドゥダ大統領からは、NATO加盟国が国内総生産(GDP)の少なくとも3%を防衛費に充てるという提案があったという。現在の加盟国の目標は2%だ。

テキサス大学の大統領歴史学者ジェレミ・スーリ氏は、大統領選候補者と外交官との会談は通常のことだとしながらも、トランプ氏とハンガリー首相との会談やサウジアラビア皇太子との電話会談は異例だと思うと述べた。

トランプ氏の顧問であるブライアン・ヒューズ氏は 「世界の指導者らとの会談や電話は、米国のわれわれには自明なことを改めて認識させてくれる。すなわち、ジョー・バイデン氏は弱く、トランプ氏が第47代米大統領に就任すれば世界はより安全になり、米国はより繁栄するということだ」と語った。

トランプ氏陣営の報道官、カロリン・リービット氏は 「米国の同盟国はトランプ大統領の再選を心待ちにしている」と述べた。

<ドイツのバイパス外交>

ほとんどの国のアプローチは、首脳とトランプ氏との会談といった直接的なものではない。

ドイツは州レベルでトランプ氏の共和党支持層との関係を築き、同国が米国産業に多額の投資をしている点を強調している。

トランプ氏が大統領在任中にドイツの自動車産業に懲罰的な関税をかけると脅したこと、また現在は全輸入品に最低10%の関税をかける意向を示していることを念頭に、ドイツは調整役を使ってトランプ2.0に備えようとしている。

調整役のミヒャエル・リンク氏は「バイパス外交」を指揮し、ドイツが多額の投資を行っている激戦州を訪れている。

「トランプ氏が再選された場合、EUからの商品に対する懲罰的関税を阻止することが極めて重要だ」と同氏は語った。

リンク氏はオクラホマ、アーカンソー、アラバマ、インディアナ各州の共和党知事とも会談。各訪問先で、良好な貿易関係を保つことが、ドイツの米国でのプレゼンスを支えると訴えた。米国製自動車を最も多く輸出しているのは独自動車大手BMW(BMWG.DE), opens new tabであり、ドイツ政府によると同国企業は86万人の米国人を直接・間接的に雇用している。

<トランプ氏に好意的な顔ぶれ>

メキシコ在住の2人の情報筋によると、同国政府高官らは、移民問題や合成オピオイドの米国への密輸問題など、「トランプ政権」下でメキシコへの圧力が強まりかねない問題について話すため、トランプ氏に近い人物と会っている。

メキシコ政府高官らは北米地域の自由貿易協定についても議論。この協定はトランプ政権下の2020年に修正され、次は26年に見直される予定だ。

またメキシコ与党は、トランプ、バイデン両氏のどちらが勝利する可能性が高いかによって、次期外相に任命する人物を変えることを検討していると、2人の情報筋が語った。

メキシコでは6月に大統領選挙が行われ、現在の予想通り与党候補のクラウディア・シェインバウム前メキシコ市市長が勝利すれば、米大統領選の1カ月前の10月に就任する運びとなる。世論調査がトランプ氏勝利を示唆した場合、シェインバウム氏はマルセロ・エブラルド氏を外相に選ぶ可能性が高いと情報筋は語った。同氏はトランプ前政権時代に外相を務めた人物だ。

バイデン氏が勝利しそうな場合には、シェインバウム氏はフアン・ラモン・デラフエンテ前国連大使を選ぶ可能性が高いと情報筋は話した。

4月24日、 トランプ前米大統領が11月の選挙で政権に返り咲く事態に備え、同盟諸国は自国の利益を守り、あるいは推進するために様々な手を打ち始めている。写真は2023年10月、アイオワ州シーダーラピッズで飛行機に乗り込むトランプ氏(2024年 ロイター/Jonathan Ernst)

<日本も秋波>

日本はトランプ氏陣営との外交関係を強化するため、高尾直氏の派遣を準備している。高尾氏はハーバード大学で学んだ通訳で、安倍晋三元首相がゴルフを通じてトランプ氏と親しくなる手助けをした人物だ。

また麻生太郎自民党副総裁は23日にニューヨークでトランプ氏に会った。

日本はトランプ氏が保護貿易主義を復活させ、在日米軍駐留経費の負担増額を要求してくる可能性を懸念している、と政府高官らは話した。

一方英国では、現在野党の労働党が年末に予想される選挙での勝利を有力視されている。同党がトランプ氏と良好な関係を築くのは、より険しい道のりかもしれない。

外相候補である労働党のデービッド・ラミー氏はかつて米タイム誌に、トランプ氏は「女性嫌いでネオナチの社会病質者」だと書いた。ラミー氏は現在、共和党との関係構築に取り組んでいると労働党関係者は語った。トランプ前政権下で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏など、トランプ氏が返り咲いた場合の閣僚候補と見られる面々と面会したという。

トランプ政権下で国家安全保障担当の大統領副補佐官を務めたビクトリア・コーツ氏は、英労働党側の「個人的な暴言」を引き合いに、トランプ氏が勝利すれば米英関係は荒れる可能性があると述べた。

<オーストラリアの不安>

オーストラリアの元首相で駐米大使を務めるケビン・ラッド氏は以前トランプ氏を批判したが、最近になってこれが同氏を怒らせている。

トランプ氏は先月のテレビインタビューでラッド氏の発言を耳にしたことを明かした上で「全面的に敵意を向けてくるなら、彼は米国に長くはとどまれない」と語った。

オーストラリアのウォン外相はラッド氏をすかさず擁護し、トランプ氏が大統領に返り咲いたとしても、ラッド氏は駐米大使のままだと強調した。

ラッド氏は水面下で、オーストラリアと米国の間の重要な安全保障上の合意をトランプ氏が撤回しようとするのを阻止しようと動いている、とオーストラリア駐在のある外交官は解説する。

バイデン政権は既に、バージニア級原子力潜水艦5隻をオーストラリアに売却して同国に原潜部隊を導入するための最初の手続きを進めることに同意している。

この外交官によると、ラッド氏は本国政府に働きかけ、トランプ氏がこの話をご破算にするのを難しくするための対応を急ぐよう働きかけているもようだ。

ただストラテジック・アナリシス・オーストラリアのマイケル・シューブリッジ氏は、トランプ氏が掲げる「米国第一主義」によって両国の合意が白紙になる可能性はまだ残っていると警告。トランプ氏が「米海軍には(原潜が)十分でないのでオーストラリアは手に入れられない」と言い出すための手段は十分にあると述べた。

<韓国のひそかな対応>

トランプ氏に対しする働きかけを目立たないように行いたいなら、その方法の一つはロビイストを活用することだ。

ワシントンに駐在する元韓国政府高官は、バイデン政権は外国政府の動向を観察しているので、韓国はロビー活動団体経由の「目に見えない形」でトランプ氏の考えを把握するやり方を好んでいると明かす。

現役のある韓国政府高官も、ワシントンのロビイスト界隈ではトランプ氏の貿易や投資、特にインフレ抑制法に対する見解を理解したい韓国側との間で活発なやり取りが行われていると述べた。

幾つかの同盟諸国は、バラード・パートナーズのようなトランプ氏に近いロビイストを雇っている。バラード・パートナーズを運営するブライアン・バラード氏は、トランプ氏と緊密な関係にあるロビイストとして引く手あまたの人物だ。

バラード・パートナーズのパートナーを務めるジャスティン・セイフィル氏は「当社の多くのメンバーは長年、トランプ氏と盟友関係を築いている」と説明。顧客には、日本やコンゴ民主共和国の名前もある。

日本外務省は、さまざまな専門家からの助言や支援を求めているとしつつも、バラード・パートナーズとの関係についてはコメントしなかった。

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Senior Correspondent based in Mexico. Reports on politics, corruption, security, migration and economy in Mexico and Central America. A Peruvian journalist with more than 20 years of experience in Latin America and the Caribbean covering elections, coups d'etat, uprisings, summits, economic crisis, natural disasters and sports. Previously based in Peru, Bolivia and Venezuela, he's fluent in Spanish and English.

Washington-based correspondent covering campaigns and Congress. Previously posted in Rio de Janeiro, Sao Paulo and Santiago, Chile, and has reported extensively throughout Latin America. Co-winner of the 2021 Reuters Journalist of the Year Award in the business coverage category for a series on corruption and fraud in the oil industry. He was born in Massachusetts and graduated from Harvard College.

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