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諫早湾干拓「開門認めず」 最高裁、司法判断ねじれ解消 - 日本経済新聞

国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡り、国が潮受け堤防排水門を開けるよう命じた確定判決の「無効化」を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(長嶺安政裁判長)は2日までに、漁業者側の上告を退ける決定をした。国に開門を義務付けた2010年の確定判決は失効した。裁判官5人全員一致の結論。

決定は1日付。開門命令を無効とした22年3月の二審・福岡高裁判決が確定した。「開門せよ」「開門認めず」と相反する判断が並び立っていた「司法のねじれ」は解消され、20年以上にもわたる法廷闘争は事実上、決着した。

係争中の同種訴訟は福岡高裁などであるが、今回の判断が踏襲されていく可能性が高い。

排水門を巡っては10年、福岡高裁が国に開門を命じると、公共事業の見直しを重視する当時の民主党政権が上告を見送り、判決が確定。その後、開門に応じるまでの制裁金(1日90万円)の支払いも認められた。他方、19年には開門の差し止めを命じる判決など2件が最高裁で確定し「ねじれ」が生じた。

自民党の政権復帰を機に、国は開門しない立場を改めて明確にした。10年の福岡高裁判決の無効化を求める訴訟を14年に起こした。

今回確定した22年の福岡高裁判決は▽近年は漁獲量は増加傾向にある▽水害の危険性や塩害による農業被害など開門による支障が増大した――など、開門判決が出た10年当時から22年までの「事情の変化」を考慮。国の主張を認めて「開門の強制は許されない」との結論を導いた。制裁金の支払い義務も消失した。

裁判所はこれまで当事者に和解による解決を促してきた。

国は16〜18年、非開門を前提として、100億円の基金を設立して有明海の調査や水産資源の再生に取り組む案を漁業者側に提示した。裁判所もこの案に沿って和解勧告をしたが、漁業者側は開門しなければ調査の意味がないとして受け入れなかった。

21年には福岡高裁が「判決では解決に寄与できない」として、開門の是非に触れないままの和解協議を呼びかけたが、国側が「開門の余地を残した協議はできない」と応じなかった。

02年の最初の提訴から約20年。相次ぐ訴訟は地域にあつれきを生み、国に対する不信感も増大させた。

横浜国立大の宮沢俊昭教授(民法)は「司法判断は一定の区切りを迎えたが、この間、地元住民の分断は深まってしまった」と指摘。「国は、地元住民が利害関係を超えて話し合える環境を主体的に整え、丁寧な合意形成を図るべきだ」と話している。(嶋崎雄太)

▼国営諫早湾干拓事業 有明海内の諫早湾の湾口を全長7キロの潮受け堤防で閉め切り、約670ヘクタールの農地と農業用水の淡水調整池を整備した事業。1989年に着工し、2008年に完了した。総事業費は2530億円。
1997年の堤防閉め切り後、有明海で養殖ノリの変色など漁業被害が表面化。2002年に漁業者側が工事中止を求めて提訴して以降、堤防開門の是非を巡る複数の訴訟が起こされてきた。

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