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日本の探査機、月面に軟着陸 ただし太陽電池が作動せず - BBC.com

ジョナサン・エイモス、科学担当編集委員

Slim artwork

画像提供, Jaxa

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は20日未明、月探査機「SLIM(スリム)」が月面着陸したと発表した。ただし、太陽電池の発電ができていないことから、任務は数時間しか続けられない可能性がある。

ただし、搭載した太陽電池からの発電ができず、原因が不明な状態で、JAXAの技術者たちはミッションの成果を確保しようと努めている。

太陽電池の発電がないSLIMは、バッテリー電力に依存しており、その電力はいずれ尽きる。そうなると、SLIMは指令を受けることも、地球と交信することもできなくなる。

技術者たちは現在、データ収集活動を優先させている。バッテリー電力を温存するために、ヒーターの電力を切るなどの延命作業を行ったうえで、撮影した画像をダウンロードしたり、着陸のためのナビゲーション・データを優先的に取得している。

SLIMとの交信が途絶えても、JAXAはミッション継続に努める方針。太陽電池が発電していないことについて、想定の方向をSLIMが向かなくなった可能性が考えられるといい、データの分析を進めている。月面に差す太陽光の角度が変われば、SLIMの太陽電池が起動する可能性もあるという。

探査機の月面着陸を喜ぶ日本の人たち

画像提供, Reuters

ソフトランディング成功と言えるのかと記者会見で質問されたJAXA宇宙科学研究所の國中均所長は、「うまくいっていないなら、高速で激突していたはずだ。そうなれば、探査機の機能はすべて失われていたはずだが、着陸後もデータが地球に送り届けられているということは、当初の目的としていたソフトランディングに成功した証左だと考えている」と答えた。

SLIMは、独立して月面を移動する2台の小型プローブ(月面探査車)を搭載しており、着陸直前にこの2台は正常に分離できたことが送信データからうかがえる。

SLIMには赤外線カメラも搭載されており、これで数日間かけて月面を撮影し、月面の岩石の組成などを調べる予定だった。バッテリー電力のみでこの調査がいつまで続けられるのかは、不透明な情勢となっている。

artist impression of two space rovers on Moon

画像提供, Jaxa

過去の事例から統計的に、月面着陸は非常に困難なことが分かっている。成功例は約半数にとどまっている。

JAXAは新しい高精度の「ピンポイント着陸」技術に望みを託した。「画像照合航法」といい、SLIM搭載のコンピューターがカメラ撮影データを高速処理し、クレーターなどの地形を読み取り、障害物を回避しながら目的地へ向かう技術だ。

技術者たちは、着陸目的地から誤差100メートル以内の着陸を目標としていた。SLIMが実際にどの程度の精度で着陸できたのか、これからデータを検証することになるものの、これまでに得られている情報から、この技術は想定通りに機能した様子だ。

JAXAの國中所長はピンポイント着陸について、「ほぼできただろうと考えられる」と記者会見で話した。ただ、情報を正確に分析するには、約1カ月はかかるという。

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SLIMは20日午前0時ごろに降下をはじめ、午前0時20分ごろに高度が0メートルに位置しているとデータが表示された。

「シオリ」と呼ばれるクレーター近くの着陸地点は現在、太陽光を浴びているものの、月末には「夜」が訪れる。それに伴う急速な気温低下で、SLIMの電気系統が壊れるおそれもある。

JAXAは今回の月面着陸に先立ち、すでに2回、探査機の小惑星着地を成功させている。今後は、アメリカの航空宇宙局(NASA)が進める50年以上ぶりの有人月面着陸と持続的な月面駐留の計画、「アルテミス」計画にJAXAも重要な役割を果たしていく。

Shioli Crater

画像提供, NASA/LRO

昨年には日本の民間企業、ispace (アイスペース)が月面着陸を試みた。しかし同社の「HAKUTO-R」は、搭載コンピューターのソフトウェア不具合で月面上の正しい高度が判断できず、月面に落下した。

アメリカの民間会社アストロボティック・テクノロジーは18日、月着陸機「ペレグリン」の着陸を断念。ペレグリンは推進システムの故障のため、着陸を試みることができないまま、地球の大気圏に突入して燃え尽きた。

イギリスのオープン大学のシメオン・バーバー博士は、ペレグリンに計測器を乗せていた。

バーバー博士はJAXAの成功を祝し、「自分にとって、この月面着陸で何より大事なのが高精度の着地だった。見事な成功だったので、自分が担当者だったら大喜びしている」とBBCに話した。

「今ではさまざまな組織が当事者となって、月面を目指している。任務の成否を問わず、いろいろな人がそうやって得ている知識をすべて集積すれば、将来的にもっと成功するミッションをどうすれば組み立てられるか、私たちはコミュニティーとして学習できる」と、博士は意義を強調した。

同様に、デジタル誌「スペース・ウォッチ・グローバル」のエマ・ガッティ博士は、日本にとって「歴史的な成果」だとたたえた。「威信がかかっているし、日本にとって国として大事なことだ。これまで多大な投資をしてきただけに、日本にとって大事なことだ。それに、中国やアメリカほどの大国でなくても、可能なのだと証明したことになる」。

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